近年特に注目され、食ともとても密接な関係にある環境ホルモン(内分泌攪乱物質)の現状についてご説明いたします。
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環境ホルモンは食に密接
環境ホルモンは、外から人間の身体の内部に入りこみ、あたかもホルモンと同じような働きをしたりホルモンの働きを妨げたりする化学物の事を指します。環境庁では、環境ホルモンの疑いのある化学物質に67種を指定しています。また、日本工業界では環境ホルモンの調査の対象としてダイオキシン・農薬・樹脂原料・界面活性剤等をはじめとした143物質をリストアップしています。しかし、実際に我々の日常生活の中には人間が作り出した約8千種類もの化学物質が至る所に溢れかえっており、その影響や実態がわからないものが多く存在しています。
ほとんどの食品がビニール袋や食トレイ、さらには缶やペットボトル、プラスチック容器に入れられて販売されており、さらにそれを食すにもプラスチックの食器等を使用して口に運びます。これらに含まれる化学物質が溶出して食品を汚染しているのです。その代表となる物質をご紹介致します。
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食品容器に含まれる化学物質
●ビスフェノールA br>
ビスフェノールAは硬質プラスチックのエポキシ樹脂やポリカーボネートの原料で酸化防止用添加物や塩化ビニールの安定剤としても使用されているものです。エポキシ樹脂はお椀やお箸や缶詰のコーティング剤や歯の充填剤等に、ポリカーボネートは給食食器・哺乳ビン等に一般的に使われています。また、国立医薬品食費衛生研究所の実験によると缶飲料ではジュースやお茶よりもコーヒー飲料からの検出が多いことが報告されています。そして、海や川からの検出実態もある為、魚介類等の二次的摂取にも気をつけなくてはなりません。精子数を減少させたり乳ガン細胞を増殖させたりする疑いがあります。
●フタル酸エステル br>
フタル酸エステルにはいくつかの種類があり、主に塩化ビニールの可塑剤として接着剤や塗料等として世界中で多量に使われていて、塩化ビニールには原料の30%も添加されていると言われています。可塑剤は主に柔軟性を持たせるために使用されていますが、脂溶性の特徴がある為に油分に溶けやすく食品用ラップや赤ちゃんのオモチャからも溶け出します。接着剤や塩化ビニールは家具や建材等、広い範囲に使用されていいる為に住居内の空気を高濃度に汚染し、廃棄や焼却により境汚染の原因になります。動物実験でオスの生殖器の異常や精子形成不全や神経機能や免疫機能の障害を起こすことが報告され、EU各国では使用規制をはじめています。
●スチレン br>
スチレンはカップ麺の発砲ポリスチレンで、国立医薬品食品衛生研究所の実験によると、カップ麺に熱湯をかけて30分後にスチレントリマー(スチレン分子の3量体)を5〜62ppb検出しています。 油揚げ麺の表面に最も付着しやすくてスパゲティなどでは電子レンジ加熱のほうが熱湯を注ぐより溶出量が多いこともわかっているので注意しましょう。
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●アルキルフェノール化合物 br>
非イオン系合成洗剤の界面活性剤をはじめプラスチックやゴムの添加物や農薬等にも使用され、これが下水などに入って分解されてできるノニフェノールやオクチルフェノールは川や海に流れだし魚介などの体内に蓄積してしまいます。環境庁の調査した河川や海等の80%からノニフェノールが検出されており東京の多摩川や隅田川、東京湾の汚染は高濃度だと報告されており、EU諸国では使用規制が進んでいます。人間の影響としては、乳ガンや子宮内膜症の誘発や精巣機能障害等の疑いがあります。
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環境ホルモンによる人体の影響とは?
環境ホルモンによる人体の影響として、精子数減少が報告されています。世界的な傾向として、成人男性の精子数が最近50年間でほぼ半数に減っていることが明らかになりました。また、睾丸が腹腔に止まって下に降りてこない停留精巣の発生頻度が、最近20年間で1.8倍に増加していることがデンマークの調査でわかりました。この他にも、精巣ガンの患者数が最近40年間で3倍から4倍に増加していることがデンマークで指摘され、子宮内膜症の患者が最近20年間で増加の傾向にありその原因としてダイオキシンの生殖毒性も疑われています。そして乳ガンや免疫機能の障害等様々な病気のリスクがあります。
また、環境ホルモンは、子供や大人だけではなく、胎児にも影響を及ぼします。胎児への影響で、奇形や先天異常、健康障害が起こることもあります。妊娠2〜3ヶ月までは胎児の臓器や器官が作られる時期なので、このような時期に、摂取しないようにすることも親としてとても大切なことです。
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