最近の欧米諸国では『アタッチメント・ペアレンティング(愛着育児)』という育児方法が注目されています。赤ちゃんに依存したいだけ依存させ、その要求に応えて肌と肌を可能な限り密着させるという育児方法です。これは、昔からある育児方法でもあり、日本の伝統的な育児法でもあります。小児科医で8人のお子様を持つ父親でもあるウィリアム・シアーズ博士が、この新しい言葉を提唱して広く受け入れられるようになりました。
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抱っこで肌と肌を沢山密着させて下さい
かつては「抱き癖がつくからよくない」「わがままに育つから駄目だ」「肺の運動にいいから」とされて、赤ちゃんが泣いてもすぐに抱き上げない方が良いとする育児方法が多く見られました。しかし、これとは逆に、乳幼児期に要求に応えてもらえる事で、親との間に強い絆や信頼関係が出来るようになるのです。また、自信が植え付けられる事で、自然に自立心が芽生えてより自立した子どもへと成長できるという特徴があります。
これと同じ事が30年も前から言われています。ジーン・レイドロフ氏は、南米のインディオとの生活体験を通じ「乳幼児は最初の要求を満たさないと次の発達段階に進めない」という事を指摘していました。これは、抱っこをしてもらえるという要求が満たされない限りは、子どもに自立心が芽生えないという主張です。この他にも、アフリカ・アジア・ラテンアメリカ等、50以上もの研究により、そのことが確認されています。
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抱っこで親が優しくなれる
シアーズ博士は「1日に数時間赤ちゃんを洋服を着るように抱っこして毎日の生活を送ること」を提唱しており、乳幼児と密着するで親の感受性がアップして子どもの要求に敏感に応えられるようになると語っています。さらに、沢山抱っこされる乳児と抱っこされない乳児を比較すると、泣く頻度は同じであっても、泣く時間は沢山抱っこされた乳児の方が43%とはるかに少ないという事が判明しているのです。そして、泣き止まらせるにも、抱っこが一番効果的とされています。
抱っこすることは、赤ちゃんを落ち着かせる効果だけでなくて覚醒状態を作ると言われており、運動感覚と前庭器官を刺激するには、抱っこすることが一番と言えるでしょう。抱っこされることによって前後・左右・上下と全ての方向の刺激を経験することになります。
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また、乳幼児期の触れ合いは、ストレス調整能力を通して、脳や行動様式の成長に影響するという研究結果も出ています。ストレスの調整能力とは、人の生涯の全般的人生体験への適応能力を定めるものであり、幸か不幸を分けるものといえる重要な役割を果たすのです。
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成長にも変化が
マウス実験では、赤ちゃんの時に触られていないネズミより、よく触られたネズミの学習能力や記憶力は優れているという結果が出ています。副腎皮質刺激ホルモンを調べると、よく撫でられたネズミはストレスや新しい状況下でも、生涯ストレスホルモンの分泌が少ないことが判明しました。
人間では、親に触られてきた乳幼児に比べ、殆ど触られることのなかった孤児の乳幼児は、肉体や精神、運動ともに成長が著しく遅れ、成人しても様々な行動傷害が見られるという調査があります。
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ベビーカーよりも抱っこ紐を!!
最近では、親子の強い絆を結ぶ道具として『抱っこ紐』の使用が有効と薦められています。ベビースリング型の抱っこ紐を親子間の絆が弱い貧しい親子に配布したところ、1歳では83%の親子間で強い絆が築かれていたのに対し、配布されなかった親子間では38%と大きな差が見られたと言う結果がでています。この実験は、未熟児に対しても行われ、93%対57%と同様の結果が得られたそうです。
『アタッチメント・ペアレンティング』は多くの研究に裏付けられ、抱き上げる親にとっても心地よく、そして抱っこをされる赤ちゃんも安心して満ち足りた気持ちになります。赤ちゃんの脳は「親に密着したい」という潜在的欲求があり、母親の脳も子どもの泣き声に反応するように形成されているのです。
これほどまでに『抱っこ』という行為には多くの効果が認められています。しかしながら、人間を取り巻く環境はベビーカーやベビーラックなど便利な製品によって劇的に変わってきているのです。ベビーカーやベビーラックでは、前後の動きしか経験しなくなり、親子の信頼が薄れます。また、ベビーカーで幼児が指を切断するという事故も起こっています。
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抱っこが出来るのはその時期だけ
近年では、電車を始めとした交通機関の中でのベビーカーが問題になっておりますが、それ以前にもう一度それを使用せず、可愛い我が子を抱きかかえるという事に着目してみてはいかがでしょうか?
子どもを抱く事は重く体温も高い為に暑く疲れます。手が塞がり不便を感じることが多くあります。その為ベビーカーは一切使用するのは難しいという方も多くいらっしゃるでしょう。
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ですが、抱っこは最高のスキンシップです。我が子との愛情と信頼をたっぷりと形成することが出来る時期は、抱っこが出来るその数年しかないのです。だからこそ、しっかりとご自身の胸に包み込み、ご自身の心臓の鼓動を聞かせてあげて下さい。
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