煙草の煙やにおいは7メートル先まで届くといわれています。子どもの受動喫煙と聞きますと、家族が吸っている煙草の煙を直接吸い込むことだけを考えがちですから、子どもの前で煙草を吸わなければ受動喫煙を減らせると誤解されることが多いです。
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受動喫煙は発病の元
しかしながら、受動喫煙の大部分は室内空気中に滞留している煙草の煙を無意識に長時間にわたって吸うことによって発生しています。閉め切った気密性が高い部屋では、目に見えず煙たさを感じなくても煙草の煙は空気中に滞留してるのです。子どもがこうした部屋で数時間過ごすとで、直接喫煙者の側にいて煙草の煙を吸ったことと同じ分量を、また最悪の場合はその何倍もの量を吸ってしまうことになりかねません。
受動喫煙は、子どもに様々な病気を引き起こすだけでなく、子どもの成長や知能の発達にも悪影響を及ぼすことが明らかになっています。米国立環境健康科学研究所の調査によると、間接喫煙によりタバコの煙を吸うとIQ(知能指数)が下がることが判明しています。 アメリカの小中学生4,000名余りに読解力や計算能力テストを行った研究では、家庭での受動喫煙の程度が強い生徒ほど試験点数が低いという結果でした。
さらに、6歳から16歳までの米国の子ども4399人を調査の対象として、血液中のコチニンの濃度を調査が行われました。コチニンは、ニコチンが分解されてできる物質で、濃度が高いと血液中にニコチンが多くとりこまれたかが判明します。つまり、どれだけ間接喫煙を受けているかを知る手がかりとなるのです。コチニンの血中濃度と先に調べてあったIQの成績とを照合すると、コチニンの値が高いとそれだけIQのスコアが低いという全般的な関係が判明しています。
煙草の煙には、ニコチン等の有害物質以外にも約60種類の発がん物質が含まれいます。それらは特に副流煙に多く含まれています。喫煙によって生じるこれらの化学物質や浮遊粒子状物質等が、子どもたちの健康に影響を与えてしまうのです。
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喫煙でSIDSのリスク増
子どもが受動喫煙から受ける健康被害はとても深刻ですが、特に懸念されているのはSIDS乳幼児突然死症候群です。日本での調査では、両親が喫煙する場合子どもがSIDSで死亡する危険性は4.7倍に増加すると報告があります。受動喫煙は子どもの気管支喘息や呼吸器疾患のリスクを増大させ、家庭内で喫煙する人数が増えるほど子どもが喘息発作のために学校を休む日数が増えるというデータもあります。
この外にも、受動喫煙は子どもの中耳炎の原因になることも証明されており、のどの奥と中耳の間には耳管という管があり、のどに吸いこまれたタバコの煙は耳管を通って中耳にも侵入することが原因です。さらに、子ども時代に受けた受動喫煙の程度が強いと、成人後に肺がんにかかる危険性が高くなるというデータもあります。
危険に晒されるのは、子どもだけではありません。3時間以上禁煙できない空間(受動喫煙)にいる女性の子宮頸部からは、タバコ由来の発ガン物質が検出されています。そのため、子宮頸部ガンのリスクは3.4倍に増加することが報告されました。
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また、最近では妊婦の喫煙が増加している様です。喫煙を我慢することのストレスよりは、吸う方が良いという事が言われているケースもあるようですが、妊娠中の喫煙は絶対に止めてください。まず、喫煙自体で女性は妊娠する能力の低下、早期破水、前置胎盤、胎盤異常、早産や妊娠期間の短縮、胎児の成長が制限されたり、低出生体重の原因となってしまいます。この外にも宮外妊娠、自然流産、口蓋裂の可能性があります。出生後の乳児期には、乳児突然死症候群や、喘息を始めとした呼吸器症状、アレルギーを引き起こす原因となるのです。
室内や人のいる側、また妊娠中や妊娠前に喫煙をすることは、子どもや非喫煙者の体にがん細胞を植え付ける行為となります。
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