ストーカーの被害者にも、加害者にもならないために
ストーカーは男女の恋愛のもつれだけではない。
ストーカーと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、男女の恋愛事情からくるもつれです。例えばフられた男が一方的に女性に対してストーキング行為を行ってしまいトラブルに発展してしまう、最悪の場合、傷害や殺人事件に発展するケースもあります。しかし、ストーカーというのは男女の関係だけではありません。まずはストーカーとは一体どんなケースがあるのか見てみましょう。もしかしたら、アナタも誰かに対してストーカー行為を行っているかもしれません。
※当ページで言うストーキング行為とは、嫌がる相手に対して自分をアピールし続けたり、嫌がらせを行ったりする行為と定義していますが、人間関係も面識の無い第三者から一方的に好かれてストーキングされる行為はメカニズムが別と考えているため含まれていません。
1、男女の恋愛事情から発生する恋愛ストーカー
やはり一番多いのは恋愛事情から発生するストーカーです。優しくされた思い出や、まだ好きな気持ちを抑えることができずに相手のことが気になり、無意識のうちに相手の情報を集めたり、後から追いかけたりするケースがあります。多くの人はこのようなストーキング行為はしませんが、一部の人は沸きあがる感情に勝てずストーカーになってしまいます。
2、会社を辞めた(やめさせられた)社員が起こす会社ストーカー
会社を辞めた後に、会社に対して不当解雇だと訴えたり、会社の社長や上司に嫌がらせをしたり、会社のサービスに悪影響を及ぼすような業務妨害を行ったりするケースがあります。不当解雇などは法律なども絡む問題となりますが、解雇された時点で会社側は解雇した人物に対して三行半を下しているのに、解雇された側は会社に戻りたいという思いで会社に対してアプローチをしています。普通のストーキング行為とは違うと思われがちですが、嫌がる相手に対して自分をアピールしたり、嫌がらせをしたりする行為と同じです。不当解雇などで争うことが良いことなのか悪いことなのかの議論はここでは行いませんが、これも一種のストーキング行為です。
3、隣人や身近な人物に対して嫌がらせを行う、復讐ストーカー
近隣同士のトラブルや、友人関係のもつれなどにより、相手に対して嫌がらせを行ってしまうストーカーが生まれる事もあります。相手に対して嫌なメールを送ったり、掲示板などで悪口を広めたり、何かあれば相手のことが気になって嫌がらせをしないと気がすまない。こういうストーカーを行ってしまう方は、実は少なくありません。時には何も悪い事はしていないのに、なぜか一方的に嫌われてしまい、イタズラや嫌がらせを受けたりする事もあります。
ストーカーを行ってしまう人物にとっては、とにかく相手への恨みや憎しみでいっぱいです。何年経っても忘れることができず、夜も眠れず、相手の事ばかり考えてしまい、悪い行為へ走ってしまいます。これも一種のストーカーで、私は復讐ストーカーと呼んでいます。
普通の人がストーカーになるまでの5段階メカニズム
ストーカーになる人は、最初からちょっとおかしい人なんだと思っている人は大勢いらっしゃるかと思います。しかし、本当に普通で優しい心の持ち主でも、ふとしたことでストーカーへの扉を開けてしまい、危険なストーキングを行う人物へ成長してしまうことがあります。なぜ、人はストーカーになるのか、そのメカニズムをアドラー心理学をヒントに提唱してみたいと思います。
第1段階:優しさと賞賛の幸福
あの人が優しくしてくれた、今の組織での地位が幸せだ。ストーカーの始まりはこんな幸福感から始まります。人は誰かに優しくされたり、認められたりすると幸福を感じます。一度味わったその幸福感は長続きすると信じてしまいます。しかし、その環境が崩れてしまったときに、人はストーカーへの段階を歩み始めます。
例えば、付き合い始めた頃は自分に優しかった相手が、恋愛のもつれにより愛がなくなったときに突然冷たくなったというパターンがあります。幸せだった生活はまだ頭の中にありますが、もう相手は自分を認めてくれないし、優しくしてくれません。幸福だった環境が崩れた瞬間、もっと相手に認められたい、好かれたい、優しくしてほしいという賞賛の欲求が強くなります。
これは保障がとても厚い会社で解雇されたり、信じていた何かが実はそうではなかったと裏切られた際にも同じような感情になります。一度感じた幸福感を忘れることができないためです。
そこでこの人物が行うのは、優しくしてくれた相手への強いアピールです。「もっと私に優しくしてほしい」「もっと私を褒めてほしい」という賞賛の欲求です。この段階ではまだストーカー行為を行うわけではありません。認めて欲しいという欲求から、恋愛相手に対して相手が喜ぶようなことをしたり、上司や社長にたいして仕事ぶりをアピールしたりします。これは誰かに迷惑をかける行為ではありません。従順であり、自分が相手にとってどれだけ必要な人間かアピールする段階です。
一見、悪くない行為に見えますが、ここで問題なのは、この欲求が「相手に認められたい」ことをしているだけで、決してそれが相手に対して「伝わる」訳ではないことです。この時点で、既に相手が自分へ興味が全く無いことを悟り始めます。そうすると、何をやっても自分が認められないという虚無感などに襲われ、次の段階へ移行していきます。
第2段階:注目されたい欲求
がんばってもがんばっても、相手に振り向いてもらえない。この時期になると、今まで幸せだった場所にもう自分の居場所が無いのではないかという恐怖感に襲われるようになります。昔のことをあきらめて次のステップへ進んで新しい出会いを求めることが出来る人と、出来ずにストーカーへと進んでしまう人の違いは、自分の居場所があるかどうかです。他の居場所を見つけることが出来る人は新しい出会いに進みますが、もしアナタの場所にしか居場所が無いと感じるのであれば、相手は全力でアナタの下に戻ろうと考えます。
頑張っても自分のことを褒めてくれない、認めてくれないと感じたら、次は何でも良いから注目されたい、あなたの目を引きたい、目立ちたいと考える心理段階に移行します。とにかくアナタに振り向いてほしくてメールをしたり、電話をしたり、プレゼントを贈ったり、強烈なアプローチを仕掛け始めます。この段階ではまだ暴力的ではありません。あなたの言う言葉も聴いてくれますし、会話が成立します。
この段階でタチが悪いのは、目立てばなんでも良いという感情になっていくことです。第一段階ではまだアナタに好かれたい、あなたに嫌われたくない、という欲求が勝りますが、この段階ではそれよりも、何でもいいから私のことを見てほしい、私に注目して欲しいと考えるようになります。そのため、相手に対して悪戯や嫌がらせに発生してしまうストーカー行為が始まります。
ただし、まだこの段階では悪質ではありません。あくまでアナタに対して嫌がらせをすることが目的ではなく、「とにかく目立つこと」が目的です。まだ取り返しがつく期間です。社会のルールを破ってみたり、からかってみたり、自分で自分を傷つけてみたり、弱い部分をアピールしたり、とにかく振り向いてほしくてあらゆる行動に出ます。これは自分に注目してほしいというアピールであって、決して相手を怒らせるところまではしないのがこの段階の特徴です。そうすることで自分の居場所を取り戻したいのです。
第3段階:反抗の始まり
注目して欲して、ありとあらゆる方法を試したけどダメだった場合、「反抗」という段階に進みます。第二段階までは、あくまでアピールのみで相手に対して反抗しようなどという気持ちはありません。しかし、この段階に進むと、相手に対して争いを仕掛けるようになります。
汚い言葉で罵ってみたり、悪口を広めてみたり、暴れれたり、時には軽度な暴力を行うこともあります。つまり、これまではあくまで従順にあなたに振り向いて欲しいという気持ちからアピールを行ってきましたが、この段階になると、もう相手から好かれることをあきらめ、相手に戦いを挑むような姿勢に変わってしまうのです。
良い正攻法でのアピールではダメだったので、次は相手をどうやったら困らせることができるか四六時中考えるようになります。
第4段階:復讐心の芽生え
正攻法から意を決して反抗という態度をとったのに、相手は全然自分を気にもしないし、何の解決にもならない場合、ついには「復讐」という段階へ進んでしまいます。とっても繊細で、とってもがんばり屋で、とっても素晴らしい自分という人間をぞんざいに扱い、認めてくれなかった。愛してくれなかった。そんな相手に復讐を挑むのです。愛や幸福の気持ちが憎しみに変わる瞬間です。
もう自分を認めてくれなくてもいい、自分を愛してくれなくてもいい。でもまだ過去の幸せだった居場所への未練があるため憎しみという感情でもいいから相手とつながろうと考えるようになります。憎まれてもいいから相手とつながり、居場所を死守したいのです。悪戯や嫌がらせはエスカレートし、とにかくひたすら相手が嫌がることを繰り返し行ってしまいます。積極的な人であればより直接的で攻撃的な行動に進み、消極的で気持ちが弱い人の場合は誹謗中傷やネットの書き込みなどを影から繰り返すような行動に進みます。また、うつ病を発症したり、自分を傷つけてしまう行動になる場合もあります。
このような行動をとることにより、「お前のせいでこんな自分になってしまった。お前が悪い、お前のせいだ。何とかしろ。」と訴えます。この段階になると、さすがに精神疾患があるのではないかと友人や家族などに心配されて病院で精神の治療を受ける場合もありますし、その前に社会のルールを破り刑事事件へと発展する場合もあります。
ストーカー事件はほとんどの場合、家族や警察などの第三者の介入によりここで終止符が打たれます。しかし、、、それもかなわない場合、悲劇的な結末を迎えることもあります。
第5段階:無と破壊
もう何をやっても振り向いてはもらえない。復讐心に燃えて嫌がらせをしてもそれはかなわなかった。相手とのつながりも、自分の居場所も見出せない。生きていく価値も無い。この段階で自分の無力さに打ちひしがれ、全てを無にしようとする破壊的欲求が生まれてきます。
もうどうでもいい。自分は無力だから何をやってもだめだ。でも、この恨みだけは忘れない・・・
こうなるともう第三者の介入も手遅れかもしれません。最悪のケースへ発展する恐れがあります。
ストーカーになる原因は、他人からの承認欲求と自分の居場所が見つからない恐怖心にある
ストーカーとは、相手に自分の居場所を求める行為の延長にある、というのが私の考えです。自分の居場所がたった一つしかない場合、その人はその場所に執着します。
例えば彼女と別れても、自分の居場所が別にあればその彼女に執着することはなく、心の傷はいずれ癒えて次の恋に向かうことができます。しかし、その彼女しかありえない、彼女がいなくなったら自分は生きていけない、そういう居場所のない追い詰められた感情がストーカーへと走らせます。
他にも、例えば会社を解雇された人物がいたとします。解雇されても、他の会社に転職できる力を持っていたり、就職活動などを行うことに前向きになる人は、解雇された会社に対してストーキング行為などは行いません。しかし、前以上の会社にはもう出会えない、就活しても希望は無い、などと考える人は、どんな手段を用いても会社に戻ろうとします。
シャットダウンがストーカーをさらに激高させる
もしストーカーから執拗な嫌がらせにあっていると感じている場合、ほとんどの人がそのストーカーから逃げようと考えます。電話番号を着信拒否し、メールをスパムフィルターにかけ、TwitterやFacebookからブロックして締め出します。そうするとストーカーはまず連絡する手段を失うため、一時期ではありますが嫌がらせから解放されて落ち着いた生活を送ることができます。嫌な相手がいた場合、このような手段をとる人が多いと思います。
しかし、これがさらにストーカーを激高させてしまうことを覚えておかなくてはいけません。
ストーカーを生み出すメカニズムをもう一度思い出してください。ストーカーの初期段階は、アナタに認められたい、つながりたいという欲求です。決してアナタから嫌われたいと思ってストーカーを始めたわけではありません。この段階で相手をシャットダウンしてしまった場合、ストーカーの段階は上がり、より攻撃的ないやがらせを行ってきます。
一度ストーカーのような行為を受けると自分自信もうつ病やノイローゼを発症し、相手から出来るだけ遠く離れたい気持ちになりシャットダウンしますが、それがかえってストーカーをより凶悪なストーカーに代えてしまうのです。
シャットダウンする前に、逃げ道を作っておくことが大事
シャットダウンした場合、もう相手からのコンタクトはこなくなりますので、時間がたつと解決したように思えます。しかし、その思いが大間違いです。相手はより高いストーカーの段階へと進み、突然目の前に現れて暴力を振るったり、最悪のケースへ発展することがあります。
でも、被害者側としては一刻も早くそのストーカーから逃げて遠い存在になってほしいものです。ですから、シャットダウンする前に相手に逃げ道を作ってあげることが大切だと私は思います。例えば自分がうつ病やノイローゼになってしまった場合、相手と会話することもできません。ですので、体調悪化によりお話できないことを伝えた上でしばらくシャットダウンすることを伝えてからシャットダウンしましょう。そうすることにより、相手はコンタクトができない理由が出来ますのでストーカーへの階段を上る前に傷が癒えたり自分の居場所を見つけることができたりして、ストーカー行為が悪質化する前に解決するかもしれません。
逃げるのではなく、なぜ自分にストーカー行為を行うようになったかを真剣に考えることが大事
ストーカーはアナタとの関係を修復したいと思っているのかもしれません。もしかしたらアナタになぜ嫌われたのか知りたいだけかもしれません。実は結構単純だったりもします。理由も聞かされず一方的に嫌われたと思った人物がストーカー行為をスタートさせ、ふと話を聞いてみたら、なぜ嫌われたか理由を知りたいだけだったということもあります。一度話しただけでストーカー行為がパッタリとなくなったというケースもあるそうです。
まずは会話することが大切
相手が自分に対してストーカー行為をしているときに、いきなり第三者を介入させるのは大変危険です。とにかく怒りをつのらせてしまいます。もちろん、現時点ですでに身の危険を感じているような状態であればすぐに警察に相談すべきですが、まだ初期段階のうちでしたら、まずは本人と会話することが大切です。
会話といっても、電話だけでかまいません。それでも相手にとっては非常に重要なことなんです。電話し、相手の思いを聞いてあげてください。そうすると、なぜ相手がストーカーになったのかその理由が分かるはずです。その上で、無理なものは無理なので理解してほしいと伝えるしかありません。ツライかもしれませんが、シャットダウンせずに相手に何度も伝えることがストーカー被害を防ぐ一歩です。
人との別れというのは、受け入れることができるようになるまで時間がかかる人がいたり、なぜ別れになったか理解できない人がいたりします。それを理解できないまま、一方的に別れを告げてシャットダウンすると、相手がストーカーへと変貌してしまう可能性が高まります。すぐに分かれたい気持ちをぐっと抑えて、しっかりと対話し、別れを理解してもらうのが本当の意味での「別れ」です。付き合うときもお互いの同意が必要ですが、実は分かれるときもお互いの同意が必要なんだと理解してください。
弁護士や警察の介入は最終手段
身の危険を感じるまでになったら、当然最後の手段として弁護士や警察に相談し、ストーカーに対して注意を行ってもらいます。これで解決しないことも多々ありますが、もはや身の危険を感じるまでになった場合は自分の命を守ることを最優先に考えてありとあらゆる手段を講じなければいけません。
また、警察や弁護士などには経験豊富な方もいるでしょうから、しっかりと話を伝えてアドバイスを貰うこともできるでしょう。ただし、警察や弁護士は法律を縦に一方的にストーカーを悪者だと決め付けて高圧的な態度で注意を行う場合もあります。ストーカーによってはそれが原因で最悪なケースへ発展させることを決意してしまうということもありえます。
弁護士や第三者に立ち会ってもらって安全を確保した上で、本人と直接話し合う機会を設けるというのが一番穏便に済むかもしれません。しかし、もちろんケースバイケースですので、専門家と綿密な相談のもと、これから行う対処法を一緒に相談していくことが大切です。
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