先天性心疾患は、生まれつき心臓に何らかの異常を認める病気です。さまざまな異常があり、その種類により診断名が決められています。ここでは、先天性心疾患の種類と詳細を解説いたします。
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先天性心疾患に付いて
●心室中隔欠損症 br>
先天性心疾患の中では一番多い病気で、先天性心疾患の約37%を占めます。心臓から血液が送られるポンプの役割を果たしている右心室と左心室の間の壁穴が開いている病気です。小さな穴では5人に1人は自然に塞がりますが、大きな穴の場合は、血液の逆流を防ぐために手術でこの穴を塞ぎます。生まれてすぐは心臓の雑音はないことが多いですが1週間くらいすると聴診器で雑音が聞こえるようになります。子どもの欠損で3ミリ程度の場合は自然閉鎖する率が高くなり1歳くらいまでに自然に閉じることがあります。子どもで1センチ以上の欠損があると肺高血圧が生じ、肺高血圧を合併すると重症になります。
●心房中隔欠損症 br>
心房中隔欠損症は心臓の中の右心房と左心房の間を仕切る壁に穴が開いている病気です。自然に塞がらない大きな穴は手術で塞ぎますが、最近はカテーテル経由で塞ぐ治療も保険診療でできるようになりました。小学校や中学校の検診で偶然に見つかることが多い病気です。生まれてすぐに見つかる小さな穴(卵円孔開存)は、1歳位までに自然に閉じることがあります。近頃は医療技術が進歩して太ももの血管から入れるカテーテルで心房中隔欠損を治療することが可能になりました。ただし、心房中隔の壁の真ん中から大きくずれていたりすると、この方法では治すことができませんから外科的手術を受けなければなりません。治療後は学校生活や体育活動に支障はありません。
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先天性心疾患の治療時期は大切
●肺動脈狭窄 br>
肺動脈狭窄は、右心室と肺動脈の間にある弁が狭い病気です。肺動脈は心臓と肺をつなぐ血管ですが、その部分が狭くなっているため(狭窄)心臓から肺に血液が流れにくくなっています。軽度の場合は治療の必要がありませんが、狭窄が中〜重度の場合には成人になるにつれて症状が出てきますので外科的手術やカテーテル治療で狭い弁や血管を拡げます。弁そのものが極端に小さい場合や、弁の上下に狭い部分がある場合は手術で治す必要があります。5〜15歳が手術に適した年齢と言われています。重症の場合はチアノーゼが出ることもあり、赤ちゃんの時に心不全を起こすこともあるので緊急手術をします。
●ファロー四徴症 br>
ファロー四徴症とは、心室中隔欠損症・肺動脈狭窄症・大動脈右方転位・右心室肥大の4つが合併しているチアノーゼが出る疾患で手術治療します。右心室の出口から肺動脈にかけて細く(肺動脈狭窄)、心室の壁に大きな穴(心室中隔欠損)があり、大動脈が心室の壁に馬乗りのような状態になっており(大動脈騎乗)、その結果、右心室に負担がかかって壁が厚くなる(右室肥大)という病気です。酸素の少ない静脈血が全身に回るため体の酸素濃度が低くなり、唇が紫色になるチアノーゼ性心疾患の中では最も頻度の高い病気です。右心室の出口が極端に狭い赤ちゃんは、強く泣いたり排便で息んだり熱を出したときにチアノーゼがひどくなり急変する低酸素発作があります。生まれて1〜2カ月頃に肺へ行く血液を増やす手術を行いチアノーゼを軽くします。
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●動脈管開存 br>
動脈管は大動脈と肺動脈の間を結ぶバイパス役の血管で赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる間には、血液の通り道として大変重要です。動脈管は産まれた後は1日で収縮して閉鎖しますが、この収縮が不完全で管があいているのが動脈管開存という病気です。太い動脈管開存の場合は重症ですから緊急手術になります。未熟児の場合は薬で収縮して閉じるケースがあるようです。
以上、先天性心疾患の種類と詳細を解説いたしました。
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