リンゴ病は子どもに多くかかる病気ではありますが、実は大人にもかかる恐れがあるうえ、その症状は子どもよりも大人のほうが重篤と言われています。
「リンゴ病」という病気の名前自体は耳にしたことがあるかと思いますが、実際にどういった症状なのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか?
病院の何科に連れていったら良いの?幼稚園や保育園、小学校には登園・登校させて良いの?感染しないの?など、病気にかかってしまうととても心配ですよね。
そこで今回はリンゴ病に症状や対策法についてご紹介させていただきます。
1.リンゴ病とは?
リンゴ病は病気の正式名称ではなく、正式名称は『伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)』と呼ばれる病名で、ヒトパルボウイルスB19によって感染してしまう感染症です。
感染してしまうとほっぺたが赤くなり、リンゴのようになってしまうからリンゴ病と呼ばれるようになりました。
病院に行って医師に診断される際にも、伝染性紅斑と言われることはほとんどなく通称のリンゴ病と呼ばれることが多くなっています。それだけリンゴ病と言う通称は、病気の特徴を捉えているということですね。
このリンゴ病は感染症だということを覚えておきましょう。
1-1.リンゴ病の症状
リンゴ病の症状として第一に思い浮かぶのは「両方の頬が赤くなる」でしょう。
リンゴ病は発疹の症状が現れる1週間~10日ほど前に発熱や鼻詰まり、せき、鼻水など、いわゆる風邪に似た症状が現れます。
そのため、「風邪かな?」と思われてしまい、実際に発疹の症状が出てから「リンゴ病だった」と気付くことが多く、初期症状でリンゴ病に気付くことは珍しくなっています。
また、リンゴ病は両頬の発疹だけではありません。
肩や背中、胸、お腹、腕、太ももなどにも発疹が出る場合があります。
発疹の特徴としては、水疱瘡のようなボツボツの発疹ではなく、レース編み状の発疹が現れ、痒みを伴うこともあります。
1-2.感染経路と予防法
感染経路としては、咳やくしゃみによって飛沫した病原菌が、口や鼻などの粘膜に付着して感染してしまう『飛沫感染』があります。
また、感染者がウイルスが付着した手で、他の人が良く触れる様な場所(ドアノブや手すりなど)を触れると感染してしまう『接触感染』もあります。
幼稚園や保育園では子ども同士の接触が多々あるので、感染しやすくなっているので注意しましょう。
リンゴ病の予防法として、必ず手洗い・うがいをすることです。
さらに、周りに風邪の症状を訴えている子どもがいる場合は積極的にマスクをしてガードすることが大切となっています。
リンゴ病にはインフルエンザのようにワクチンがなく、予防接種をして予め対策を打つということができませんので日頃の予防するようにしましょう。
1-3.リンゴ病の潜伏期間と流行時期
リンゴ病の潜伏期間は10~20日間程度と言われており、感染してから1週間~10日程度は何も体に変化はなく、その後に上記でも記載したような風邪に似た症状が1週間程度続きます。
ここで注意しなくてはいけないことがあります。
それは、風邪に似た症状の時が1番感染力が強くなっているということです。
顔や体に赤く発疹が出てきて「リンゴ病」と診断される頃には感染力ほとんどなく、弱まっている状態になっています。
流行時期はその年によって多少の誤差はでますが、例年、春ごろから7月上旬にかけて増加し始め、9月頃が1番発症しにくくなっています。
さらに、リンゴ病は約5年周期で流行することから2016年である今年は気を付けなければいけません。最近、リンゴ病が流行した年は2011年と2007年でした。ですので、今の時期から7月上旬までにかけては気を付けて生活をしなければならないので注意しましょう。
1-4.リンゴ病にかかりやすい年齢
リンゴ病は子どもに多い病気となっています。
リンゴ病は1度発症すると終生免疫ができるため、1度かかるとリンゴ病にはかからないとされていますが、中には2度目を発症する可能性のある方もいます。
抗体があるかどうかは血液検査で調べることができるので、血液検査を行ない抗体があるかどうか知っておくことをおすすめします。
かかりやすい年齢としては3~12歳の子どもに多い傾向が見られます。ただし、大人でも発症する恐れがありますのでご注意ください。
下のグラフは2011年に流行した際の年齢別にリンゴ病の報告数をグラフにしたもので、全体の1%程度ではありますが20歳以上の大人もリンゴ病を発症していることがわかります。
2.子どもがリンゴ病にかかってしまった場合
手洗い・うがいやマスクの着用などいくら予防していてもリンゴ病にかかってしまう恐れがあります。
その際に、家族感染や保育園、幼稚園、小学校の集団感染を防ぐことが大切です。特に妊婦さんへの感染は危険ですので、妊婦さんがいるご家庭ではより気を付けなければなりません。
妊婦さんがリンゴ病を発症した場合、なぜ危険なのかは後ほどご説明させていただきます。
2-1.登園や登校は?
風邪のような症状を訴えている状態では登園・登校することは大変難しい事ではありますが、頬や体に赤く発疹がでてリンゴ病ということが分かった時点では他人への感染力はすでにないため、保育園や幼稚園、小学校を休む必要はありません。
リンゴ病(伝染性紅斑)は学校保健法でも、学校において予防すべき伝染病の中には明確に規定されていないため、インフルエンザのように出席停止の扱いになる病気ではないので子どもの体調が良ければ登園・登校させましょう。
かゆみが酷い場合や筋肉痛やだるさがある場合は、安静を取って休ませることをおすすめします。
2-2.病院へは何科に行けばいい?どんな状況の場合
リンゴ病で頬などが赤く発疹が出る前の症状(発熱、鼻水、咳、くしゃみ、吐き気、下痢など)が見られた場合は、病院へ行き医師の診断を受けましょう。
この段階ではまだリンゴ病と分からないことが多いので、内科や小児科を受信することをおすすめします。
赤い発疹の痒みが酷い場合などには皮膚科を受診しましょう。
3.リンゴ病の治療法
リンゴ病にはワクチンや特に決まった薬はないので対処療法が主な治療法になります。
ただ、発疹が痒いからと言ってその部位をかいてしまうと、治りが遅くなったり、皮膚が傷ついてしまいますのでかかないようにすることが大切です。
痒いと子どもはついついガリガリとかいてしまいますので、痒み止めの飲み薬や抗炎症剤を処方してもらうようにしましょう。
さらに、日光に当たる、寒さ・暑さ、ストレスなどの刺激により、1度は治まった発疹と痒みが再発してしまうおそれがあるので、極力刺激を与えないようにすることが重要になってきます。
お風呂に入る際も熱いお湯につかるのではなく、温めのシャワーでささっと洗い流し、皮膚を清潔に保つことをおすすめします。
軟膏や痒み止めの飲み薬を処方されている場合は、お風呂上りに塗る(飲む)ようにしましょう。
また、シャンプーも刺激が強いものが多いので、肌への刺激が弱い石鹸で洗ってあげるようにしましょう。
4.大人がリンゴ病にかかってしまった場合
上記の「伝染性紅斑累積報告数の年齢群別割合」のグラフでもわかるように、20代以上の大人でもリンゴ病を発症することがあります。
もちろん、1%程度ですので、発症する確率は非常に低くなっています。特に幼少期にリンゴ病を1度発症していると2度目を発症する可能性は低く、再びリンゴ病にかかるということはほとんどありません。
ですが、幼少期にリンゴ病にかかっていない方であったり、免疫がない方ですと大人になってリンゴ病にかかることがあります。
4-1.症状は子どもよりも大人のほうが重い
大人のかかった場合は、頬に発疹は出ることはなく、手足に発疹が出ることが多くなっています。
さらに大人のリンゴ病では、指や手首、膝、腰の痛みが強くなったり、これよりも酷くなると、手の指が曲げられなくなったり階段の昇り降りにも支障をきたす場合があります。
こうした症状により、子どものリンゴ病よりも大人のリンゴ病のほうが症状は重いとされています。
上記の症状の他にも、38度以上の発熱・目まい・吐き気・だるさが襲ってくると言われています。
発熱は3日程度で下がりますがだるさは残ったまま何日かは続くかもしれません。
大人のリンゴ病は重くつらいですが、妊婦さんのリンゴ病感染は危険ですので感染しないように注意しましょう!
4-2.妊婦さんの感染に注意が必要!
妊娠中にリンゴ病に感染してしまうと、他の大人と同様に重い症状がでるだけではなく、お腹の中にいる胎児にまで影響を及ぼしてしまう危険性があるため、妊婦の方は特に気を付ける必要があります。
リンゴ病にかかってしまいますと、ワクチンやきちんとした治療法がないため、対処療法となってしまいます。
「赤芽球(せきがきゅう)」という赤血球の元になっている細胞にヒトパルボウイルスB19が体内で感染します。感染してしまうとウイルスによって赤芽球が破壊されてしまい、妊婦さんの体内では赤血球ができなくなり、それが赤ちゃんへ血液供給がいかなくなってしまいます。
それだけではなく、胎盤を通じて母子感染してしまうのです。特に、妊娠20週未満の妊婦さんがリンゴ病にかかってしまいますと、30%は妊婦さんから赤ちゃんへ感染する恐れがあるとされています。
その結果、赤ちゃんの赤血球が減少してしまうだけではなく、「胎児貧血」にもなってしまいます。この貧血状態が続いてしまいますと、十分な栄養を摂取することができないため、発育が遅れてしまい「低出生体重児」として生まれてきてしまう可能性もあります。
また、それだけではなく赤ちゃんの体がむくんだり、胸やお腹に水が溜まってしまう「胎児水腫」という症状が起こってしまい、お腹のなかで心不全や重症の貧血などを起こし命の危険を迫られたり、最悪の場合亡くなってしまう恐れもあります。
<*転載開始>
『伝染性紅斑(リンゴ病)に妊娠中にかかり、胎児に感染した女性が2011年に69人確認され、うち約7割の49人が流産、死産していたことが厚生労働省研究班(主任研究長・山田秀人神戸大教授)の全国調査で、5日分かった。』
(中略)
『母から胎児へのパルボウイルスB19感染を69人確認。うち35人が流産、14人が死産、3人が中絶で、残り17人が出産だった。妊婦の半数はリンゴ病の症状がなかった。』
<*転載終了>
前回流行した2011年に厚生労働省が行なった調査でもわかるように、気付かないうちに感染してしまっているいうことです。
ただ、お腹の中にいる赤ちゃんに何の治療もしないわけではなく、輸血用の針を刺して「胎児輸血」をする治療法もあり、たくさんの赤ちゃんの命が救われているケースもあります。
ですので、もしリンゴ病に感染してしまった疑いがある場合は早急に産婦人科を受診し、医師に相談しましょう。
リンゴ病は子どもから大人までかかる恐れのある病気です。
特に、妊婦の方は感染してしまいますと胎児にも影響を与えてしまいます。予防接種をするなどといったきちんとした予防法がないうえ、2度目を発症する方も中に入るので、免疫の有無を血液検査で調べておくことをおすすめします。
そして、少しでも熱が上がったり、関節が痛みだすなど上記の初期症状がみられた場合には風邪だと自己判断で済ませるのではなくきちんと病院へ行き、医師に判断してもらうようにしましょう。
参照サイト一覧
『日本経済新聞|リンゴ病で流産・死産、11年49人 初の大規模調査』
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0500P_V01C13A0CC0000/
『マーミー|2015年妊婦のリンゴ病が急増中!症状/予防/胎児への影響』
http://moomii.jp/birth/ringoill-notice.html
『中日新聞|リンゴ病で流産・死産49人 胎児感染の7割に』
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20131005171912315
掲載画像一覧
『国立感染症研究所 感染症情報センター』
http://idsc.nih.go.jp/idwr/douko/2011d/07douko.html
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