ここでは、虫や動物によって引き起こされる危険な病について解説しましょう。
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虫や動物による危険な病気
動物から人に感染する病気の総称を動物由来感染症といい、世界保健機関(WHO)では「脊椎動物と人の間で自然に移行するすべての病気または感染(野生動物等では病気にならない場合もある)」と定義しています。人と動物に共通する感染症は、日本では人獣共通感染症や人と動物の共通感染症とも言われています。感染症法では感染力や発症した際の重篤度等を考慮し、感染症をリスクの高い順に1〜5類感染症に分類しています。
1類感染症:エボラ出血熱・マールブルグ病
2類感染症:SARS・鳥インフルエンザ
3類感染症:細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症
4類感染症:ウエストナイル熱・エキノコックス症・オウム病・回帰熱・狂犬病・SFTS・ダニ媒介脳炎・チクングニア熱・ツツガムシ病・テング熱・日本紅斑熱・ブルセラ症・マラリア・野兎病・リフトバレー熱・レプトスピラ症
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動物由来感染症の種類と詳細
下記で虫や動物による代表的な病状をご紹介させて頂きます。
日本脳炎 br>
南アジア〜東南アジアを経て中国南部へ至るアジアモンスーン地帯に広く分布し、先ずブタの間でウイルス感染が拡がり媒介蚊がブタを吸血し、再度ヒトを刺すことによってヒトの間に流行がみられるようになります。多くは不顕性感染ですが、感染者のうち脳炎の発症率は300〜3000人に1人と言われています。日本でもは10人(死亡者は0名)以下の発生しかありません。重篤な後遺症が多くの回復者にみられると報告されています。しかし、世界では毎年少なくとも5万人以上が発病し、このうち1万人以上が死亡するとしています。世界で発生している日本脳炎の大多数が東南アジアや南アジア(の米作地帯でかつ豚を飼っている農家が集中している地域で発生しています。症状は頭痛・発熱で、重症例では意識障害・痙攣・昏睡がみられます。
デング熱 br>
東南アジアや中・南米、アフリカなどの熱帯地域に常在し、全世界で毎年50万人以上の患者が発生しているとされています。日本では、2003年に32例が報告されていますが、実際はその10倍程度の患者がいると考えられています。媒介する蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)は、空き缶の水のような少しの水たまりでも発生するため、衛生状態の良い都市部でも流行する為に旅行者が感染する機会もマラリアよりはずっと高いと考えられます。症状は発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛・発疹等で、デング出血熱になると出血傾向が強くなり、さらに重くなると頻脈・脈圧低下などの循環障害がみられ、ショック症状に陥ります。
マラリア br>
悪寒、戦慄と共に高熱が続き、頭痛、嘔吐、関節痛をともないます。特に、熱帯熱マラリアは命に関わることも少なくないので、注意が必要です。アフリカ(南アフリカ共和国の大部分を除く)で野外活動をするなど感染の危険が高い人には、発症予防のための抗生物質がありますので、専門家の医師等に御相談下さい。
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日本紅斑熱 br>
日本紅斑熱リケッチアという細菌による感染症で、病原体を持っている野外のマダニに刺されることで感染します。マダニは野山、畑、河川敷等に生息し、全ての個体が病原体を持っているわけではありません。刺されてから2〜8日後に高熱と発しんで発症し、重症の場合は死に至ることもあります。夏から初冬にかけて多く発生しますが、真冬を除いてほぼ1年中感染する可能性があり、全国では毎年100人以上の患者が報告されています。
重症熱性血小板減少症候群 br>
SFTSウイルスによる感染症で、このウイルスを保有している野外のフタトゲチマダニ等のマダニに刺されることによって感染します。また、感染者の血液・体液との接触感染も報告されています。刺されてから6日〜2週間後に発熱・倦怠感・食欲低下・嘔気・嘔吐・下痢・腹痛が現れ、重症の場合は、死に至ることもあります。日本では2013年にSFTSウイルスによる症例が国内で初めて確認されました。
つつが虫病 br>
つつが虫病リケッチアによる感染症で、小型のダニの一種であるツツガムシの幼虫に刺されることにより起こります。ツツガムシは林、草むら、河川敷などの土の中に生息していますが、全てのツツガムシが病原体を持っているわけではありません。刺されてから5〜14日後に高熱と発しんで発症し、重症の場合は死に至ることもあります。
トキソプラズマ症 br>
世界中で広く分布している寄生虫で、ネコ科動物の糞便中に排出された虫卵を摂取することで感染します。普通、人が感染してもほとんどの場合は症状が現れませんが、免疫力が低下したときに発症することがあります。また、妊娠した女性が感染した場合、流産などの原因となることがあります。砂場で遊んだあとは十分に手洗いと消毒をおこない、犬や猫に生肉を与えないことが予防方法です。
サルモネラ症 br>
哺乳類・鳥類・は虫類などが腸管内に健康保菌することが知られており、動物との接触を通じて感染して発症することがあります。発熱・下痢・嘔吐・血便などの症状を示します。は虫類などの動物を触ったときには十分に手洗いと消毒をおこなうこと、犬や猫に生肉を与えないことが感染予防となります。
カンピロバクター症 br>
家禽・家畜・ペット・野生動物などが腸管内に保菌するカンピロバクター菌が原因で、発熱・下痢・嘔吐・血便等の症状を示します。犬や猫に生肉を与えないこと、特に鶏肉はカンピロバクターに汚染されていることが多いので与えないことが予防となります。
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